恋花ロマンチカ

「……か、帰ります……」

「うん、またね〜」



緩く手を振る片桐先輩へ向かって会釈をすると、あたしは階段を駆け下りた。

いつも、強引にあたしを連れ去る余裕の先輩。

そのくせ、帰る時はいつだって引き留めることはしない。

呑まれないようにしなきゃ、気を付けないと、あたしなんて丸呑みだ。

急いで階段を駆け下りて別館を離れたおかげか、随分と息が上がっていた。

柱に寄りかかって、何とか呼吸を落ち着かせる。


『俺の事、好きになればいいんだ』


消えない言葉が脳裏に蠢く。

好きになっちゃダメだ、好きになったら負け。



なんの勝負なのか分からない。だけど、あの人を好きになったら


あたしは多分、息が出来ないくらい、溺れてしまう。