恋花ロマンチカ

「…はやく、飽きてください」


玩具だろうが遊び相手だろうが、黙って遊ばれてたまるものか。っていう、あたしの中の、紙のようにうすっぺらなプライド。

ボス戦に初期装備で挑んでいるようなものだけど、抵抗くらいしなければ、あたしなんて簡単にゲームオーバーだ。

「……彼氏、欲しかったんでしょ?良かったじゃん出来て」

ラスボスの威厳……ではなく、年齢もひとつしか変わらないって言うのに、女のあたしよりもある色気。

薄くて長いまつ毛が囲む、並行二重で切れ長の目許。捕まったら逃げられない、吸い込まれそうな大きな瞳。

香りだってそう、男物の香水は苦手だけど、嫌味のない爽やかな甘い香り。

「彼氏は……出来ましたけど、本当の彼氏じゃないし」

かすり傷程度にもならない抵抗。だけど、ふぅん、緩く吐く息とともに彼が頷く。

油断をした瞬きの刹那、その視線があたしに注がれる。


「恋人っぽいこと、したいの?」


ばくん、ひときわ大きな音が鳴る。

オレンジの教室が蘇り、あの日のゼロ距離が脳裏を埋め尽くす。

壊れたのかな、って、この人の言動にいちいち鳴って、別の心臓に取り替えたいくらいだ。