恋花ロマンチカ

やっと昼休みが来て、セリナの机の上でお弁当を広げようとした時、短くスマホが振動した。

音と同時に、心臓が、ばくん、と震える。

『出てこれる?』

シンプルで素っ気ない内容をじっとりと睨みつけた。

「どうしたの」

目ざとい声が聞こえるから画面を暗くして、ばっと見上げる。

「何でもない」

「の割に、顔赤いよ」

「え、嘘」

慌てて頬を押さえる。確かに、熱でもあるんじゃないか、と自分の体調を疑う。

「呼び出されたの?」

「うん、でも、行かなくていいかな」

王子にとっては機械のように単純作業で送り付けているだけ。震える指先を抑えて『友達と食べるので、無理です』と、初めての送信内容を何度も見つめて、いざ、送信。

意外と直ぐに既読がつくので、一息つこうと油断した心。

『まだ食べてないじゃん』

……さらに、油断。ぐるりと索敵開始。すると、渡り廊下の手すりにもたれている王子を発見した。彼はあたしの視線に気付けば、まるで洗練された微笑みを浮かべて緩く手を振る。

それに気付いた、クラスメイトの歓声が聞こえるのは、二秒後。

「ひな、王子と昼休み一緒なの?」

「良いな、代わりたい……」

抗えないと理解するのは、羨望を詰め込んだクラスメイトのまなざしを目にした時だった。