恋花ロマンチカ




夏が来たかと錯覚する程、鬱々とした汗ばむ五月の下旬。


「あんたさ、そろそろやばくない?」


とある昼休み。

賑やかな戦場、もとい学食で、ひと足先に完食した友人の香澄(かすみ)セリナは答えがいくつもある難題を課した。

口いっぱいに日替わりのパスタランチ(ナポリタン)を頬張っていたあたしは何度か咀嚼し「なにが?」と、当たり障りのない答えを返す。


「男だよ、おとこ。そろそろ、あの人いいな〜とか出てきたんじゃない?」


長いまつげが乗る奥二重があたしに向かって、ニヤリ、意地悪に弧を描く。

でも、答えを言うのは簡単。だけど少しだけ申し訳なくって、フォークを置いて口を尖らせた。


「……見た目だけじゃよく分かんなくて」

「はぁ?ちょっとくらいわかるでしょ」


当然のように言われても、分からないものは分からない。

黙っていれば「…やる気あんの?」セリナのスイッチが傾く。

「あるよ!でも、きっとあたしって恋愛に向いてないんだよ」

「恋愛に向いてないって言う時点でやる気が無い」


ビシ、と、評論家さながらのに、セリナは鋭い見解を見せるので、思わず言葉を詰まらせた。かわりに、ぐるぐるとパスタをフォークに巻き付ける。