恋花ロマンチカ

「……ん?」


項に手を当てたまま、片桐先輩は眉根を寄せた。

な、なに口走ってるのあたし……!

知らずのうちに漏れた言うはずのない言葉が信じられなくて、咄嗟に口に手を当てた。

「………………何て?」

「な、なんでもない、です!」

「いま、告白した?」

「いや、違います、気のせいです、言葉のあやです」

「気のせいで告白するの?寝てるの?」

「ひ、人を夢遊病みたいに言わないでください!先輩こそ寝てたんじゃないですか?」

「は?」呆れた声とともに、ずい、と、あたしに近寄る片桐先輩。

思わず後退りすれば、永遠には続かない部屋は小さな衝撃と共に終わりを告げた。

「誰が、寝てるって?」

簡単に捕まったあたしはノロノロと視線だけ彼を見上げる。

オレンジの光が片桐先輩の身体で遮られ、目の前には不敵な笑顔の見慣れぬ顔があるだけだ。

心臓が、一際うるさく鳴り響く。

「………で?」

至近距離の薄い唇は口角をくっと上げ、嘲笑う片桐先輩。

挑発されてる。分かるのに、単純なあたしの頭の中では、カン、何かを告げる鐘の音が鳴った。


「〜っ!だからっ!あたしと付き合ってって言ってるの!!」