やがてお目当ての教室が近付くと、「じゃあ、また明日ね〜っ!」と、嬉しそうに揺れる高らかな声が届いた。
…珍しい。
この階の教室は資料室が殆どで、生徒といえば、全く見掛けないのに。
明るい色の髪の毛、短いスカート、その後ろ姿からしても分かる、雑用など縁もなさそうな女子が一体、何の用事だったんだろ。
少しの疑問が心に過ぎるけれど、あたしは気に留めずドアを潜る。
女子生徒が出てきたその場所は、自分の目的地だったのに、あたしがそれを目にした瞬間、別の教室だと勘違いしそうになった。夕焼けのオレンジは、その人だけを照らしていた。
何故か机の上に座り込み、頬杖をついて、ぼんやりと窓の外を眺めるその姿は、登録数の少ないあたしの脳内でさえ『彼』だと言うことが、すぐに分かった。
───片桐、巧。
まるで計算されたような横顔、華奢な身体つき、何故か制服のシャツはボタンが肌蹴ていて、その肌は露になっている。
毛先がルーズにセットされた漆黒の髪はオレンジの光を浴びて褪せた色に輝いていた。
気だるげに座り込む様も絵になるなんて。
───綺麗。
男の人に見惚れるのも、そんな感想を持ったのも初めてのあたしはその時、ほぼ無意識の内にそう思ってしまった。
「……ん?」
まさか、脳内の言葉は口にも出てしまっていた。
…珍しい。
この階の教室は資料室が殆どで、生徒といえば、全く見掛けないのに。
明るい色の髪の毛、短いスカート、その後ろ姿からしても分かる、雑用など縁もなさそうな女子が一体、何の用事だったんだろ。
少しの疑問が心に過ぎるけれど、あたしは気に留めずドアを潜る。
女子生徒が出てきたその場所は、自分の目的地だったのに、あたしがそれを目にした瞬間、別の教室だと勘違いしそうになった。夕焼けのオレンジは、その人だけを照らしていた。
何故か机の上に座り込み、頬杖をついて、ぼんやりと窓の外を眺めるその姿は、登録数の少ないあたしの脳内でさえ『彼』だと言うことが、すぐに分かった。
───片桐、巧。
まるで計算されたような横顔、華奢な身体つき、何故か制服のシャツはボタンが肌蹴ていて、その肌は露になっている。
毛先がルーズにセットされた漆黒の髪はオレンジの光を浴びて褪せた色に輝いていた。
気だるげに座り込む様も絵になるなんて。
───綺麗。
男の人に見惚れるのも、そんな感想を持ったのも初めてのあたしはその時、ほぼ無意識の内にそう思ってしまった。
「……ん?」
まさか、脳内の言葉は口にも出てしまっていた。



