恋花ロマンチカ



「これですか?」

「あぁ!頼むな!」

資料で溢れ返ったデスクに座る中年男性は、あたしが頷くと顔の表面のシワを深くして笑う。

「そう言えば、先日のー」「あぁ、あれですね!」

しかし次の瞬間には、隣に座る男性と談笑し始めてしまった。その楽しそうな笑い声を素通りさせて、職員室をあとにし、放課後の校舎を一人歩く。

真っ直ぐ伸びる廊下は、オレンジの夕陽が窓の影を落とし、シンプルな床に模様をなしている。

行先はこの短期間で通い慣れた資料室。
作業もまた、最早手練た資料整理。…まぁ所謂ただの雑用だ。

クラス委員の片割れの彼は部活に勤しんでいるから、暇人のあたしは良く担任に捕まり仕事を押し付けられている。

もう慣れっこなので、言い訳しない。

内申点の為なら雑用だってしますよ。

人気の無い校舎で、あたしだけの足音だけが追い掛けてくる。