空と海と、願いごと

「暉にとって、空は特別なんだと思う。昔から、泣き虫で人見知りの強かった暉のことをなにかとかまってやってたのが空だし。暉の両親が仕事で海外に行くってなったとき、ついていくのを渋ってた暉に『うちに部屋余ってるから来ればいいじゃん』って誘ったのも空だから」

「そうなんだ?」

「うん。暉の家は両親が仕事で忙しくて、あいつ、小さい頃からわりとほったらかされてたっぽい。人見知りで寂しがりやなくせに、性格はあんなふうにちょっとわがままだろ。だから友達関係がうまくいかなくて、前は学校もあんまり行ってなかったんだって。こっちに来てからは空がいるからか、毎日学校行ってるけど……」

「そうだったんだ……」

 海くんから話を聞いて、わたしがここに来る前の空と暉くんなどんな関係だったかよくわかった。

 暉くんにとって、空は心の拠り所で。だから暉くんは、わたしと仲良くする空を見て、自分の居場所がなくなっちゃったみたいに感じたのかもしれない。

「昔から、暉はずっと空になついてんだけど、空のほうはたぶん、それをわかってないんだよな。深く考えずに『うちに来ればいい』とか『ここにいればひとりじゃないから』とか言っちゃうし。だから、昨日みたいに揉めるんだよ……」

 海くんが、顔をしかめてため息を吐く。

「天然な人たらしなんだね」

 空の笑顔を思い出しながら笑うと、海くんが「そうかも」と笑う。