暉くんと揉めた次の日。わたしは、少し早起きをした。

 昨日と同じ時間に起きたら、食堂で朝ごはんを食べる時間帯が空や暉くんとかぶる。

 空はいつものように「一緒に食べよ〜」ってわたしにくっついてくるだろうし、そうすればまた暉くんの機嫌を損ねてしまう。

 だから今日は、早めに朝ごはんを食べて、空より先に学校に行ってしまおうと思っていた。

 でも……。慣れない早起きって、意外とつらい。

 部屋を出て一階まで降りると、洗面所に向かう。大きなあくびをしながら、お風呂場と一緒になっている洗面所の少し古い木の引き戸を開けたとき。

「おはよう、真凛」

 いきなり、爽やかな声で挨拶された。

 涼しげな笑顔をわたしに向けてきたのは陸くん。

 誰もいないと思って、大きな口を開けてあくびをしていたわたしは、恥ずかしくて真っ赤になった。

「お、おはよう……。いたんだね」

「うん。風呂の掃除してたから」

 そう言って笑う陸くんは、白Tシャツに、黒のスウェットの裾を膝まで折り曲げていて、手には掃除用のスポンジを持っている。そんな格好をしていても、陸くんは朝から爽やかでかっこいい。