「今住んでる家を売って、引っ越そうと思う」
パパがそんなことを言い出したのは、今から3ヶ月前。
夜ごはんのあとに、パパとママからかしこまった顔で「話がある」と言われて。なに? って思ったら、突然引っ越しの話をされた。
その引っ越し先というのが、東京からは離れた場所にある海に近い田舎町の民宿。
パパの大学時代の親友が、その民宿のオーナーで、昔は奥さんといっしょに切り盛りしてたらしいんだけど。
何年か前に奥さんが亡くなって以降は、経営がうまく立ちいかなくなり……。さらには、近くにできた大きなリゾートホテルに民宿のお客さんが流れてしまい……。赤字が続いて、今にもつぶれそうなんだとか。
そこで、オーナーが頼ってきたのがわたしのパパ。
パパは、東京のコンサルティング会社で経営コンサルタントっていう仕事をしてる。
簡単に言うと、会社の経営がうまくいってるかを診断して、アドバイスとか相談をする仕事。
そんな仕事をしているパパに、「民宿の経営を立て直してほしい」という依頼がきて。パパは、すぐに引き受けることにしたそうだ。
だけど問題はそこじゃなくって。パパが東京の会社を辞めて、民宿専任の経営コンサルタントになるってこと。



