空と海と、願いごと

「暉くん……!」

 感情的になって追いかけようとしたら、海くんが暉くんの前にすっと出てきてとうせんぼする。

「なに?」

 暉くんが横によけて歩いて行こうとすると、海くんも同じように横によけて、暉くんの逃げ道をふさいだ。

「黙って逃げるなよ。逃げる前に、何か言うことあるんじゃない?」

「言うことなんてないし、逃げてもない!」

 暉くんが、大きな声で海くんに言い返す。

「暉がひとりだけ置いて行かれてムカついたのはわかる。けど、人が作ってくれたものに当たるのはない。謝らないまま逃げるのは、もっとない。最悪」

 海くんが、無表情で淡々と話す。

 海くんの言葉に言い返す言葉が見つからないのか、暉くんがぎゅっと手のひらを握りしめて肩を震わせた。

「ほんと、みんな真凛ばっか……」

 うつむいた暉くんが、ぼそりとつぶやく。

「なに?」

「どうせ、おれは最悪だよ」

 暉くんは不貞腐れた声でそう言って海くんを押しのけると、早足で食堂から出て行ってしまった。