空と海と、願いごと

 空とわたしの足元に散らばっているのは、お皿の破片とグチャグチャになった海鮮焼きそば。空の制服のズボンには、飛び散った焼きそばのあんかけがべたっとついていて。ちょっと悲惨なことになっている。

 突然の暉くんの行動に、食堂にいたみんながびっくりして目を見開いたまま固まっている。

「こんなんで、おれの機嫌とろうとすんな。むかつく……」

 暉くんが低い声でつぶやいて、かわいい顔を歪ませた。

「お前の親が作った料理なんていらないよ。こんなので、『たいようの家』が建て直せるって本気で思ってんの?」

 わたしを睨んで、ふっとバカにするように唇の端を引き上げる暉くん。彼の言葉に、わたしは胸がズキンと痛くなった。

 暉くんがわたしを嫌いなのはかまわない。わたしのことだったら、どんなふうに悪く言われてもいい。だけど……。ママが一生懸命に考えて作った料理を「いらない」とか「こんなもの」とか、そう言う言い方はされたくない。

 調理場のほうを振り向くと、ママがちょっと悲しそうな顔をしていた。それを見たら、胸がまたズキンと痛くなって……。

「暉くん、ママに謝って」
 
 我慢できずに言ってしまった。
 
 だけど暉くんは、わたしのことを睨むだけで何も言わず、食堂から出て行こうとする。

 まったく謝りつもりがない様子の暉くんに、わたしはちょっとむかついた。