空と海と、願いごと

「あ、陸兄。べつに何でもないよ。いつもみたいに、暉がくだらないことで不貞腐れてるだけ」

 空がハハッと笑うと、暉くんがきゅっと目尻をつりあげた。

「くだらなくなんかないよ。ここにいるあいだはひとりじゃないって、そう言ってくれたのは空くんなのに――」

「だから、いつも暉のことは気にかけてるじゃん。ほら、暉もこれ食べて機嫌直しな。真凛ママの海鮮焼きそば、すげー美味いよ」

 空が笑いながら、わたしの食べかけの焼きそばのお皿をとって暉くんに差し出す。

「ちょっと待って、空。それ、食べかけだから新しいのをママに――」

 わたしがママにもう一皿焼きそばを頼もうとしたそのとき。

「こんなの、いらないよ!」 

 ガッシャーン。

 暉くんが大きな声で叫んで、床に落ちたお皿が割れた。空が差し出した焼きそばのお皿を、暉くんが思いきり手で振り払ったのだ。