空と海と、願いごと

「昇降口で待ってても、空くんが全然出てこないから、おれ、2年生の教室まで行ったんだよ」

「だから、ごめんって。今度から気をつける」 

「空くんは『ごめん』とか『気をつける』とか、いつも口ばっかりじゃん」

「そんなことないって。ちゃんと本気で悪かったって思ってるよ」

「空くんの嘘つき。どうせ、そいつとふたりで楽しく遊んでて、おれのことなんて忘れてたくせに」

 怒っている暉くんは、空の話を少しも聞き入れようとしない。しかも、わたしのことを「そいつ」呼ばわりして、ジロリと睨んできた。

「真凛とは学校帰りにちょっと寄り道してきたけど、べつに暉のことを忘れてたわけじゃないって。今度は暉も一緒に3人で寄り道しよう」

「そいつと3人なんて、絶対やだよ」

「え〜。一日一緒に帰らなかったくらいで、そんなに拗ねないでよ」

「拗ねてない……!」

 空と暉くんが言い合いをしていると、陸くんと海くんが食堂に入ってきた。

「どうした? 何揉めてんの?」

 空とわたしの前で仁王立ちしている暉くんを見た陸くんが、驚いたように目を瞬く。