夕飯前に家に帰ると、食堂からガーリックバターのいいにおいがした。

「わ、うまそうなにおい。真凛のママ、今日は何作ってくれてんのかな？」

「なんだろうね。お肉でも焼いてるのかな」

「真凛のママの料理、美味しいよね。おれ、真凛のママが作ってくれるようになってから、毎日の夜ごはんが楽しみなんだ」

　空が嬉しそうに笑って、食堂に向かってパタパタと走っていく。

　ママの料理はほんとうにいつもおいしいから、褒めてもらえるのはすごく嬉しい。

「ただいまー！　真凛ママ、今日のごはん何〜？」

　空がカウンターから調理場の中をのぞくと、コンロの前にいた母が振り向いた。

「空くん、真凛、おかえりなさい。今日は、民宿の食堂メニューの試作品を作ってたのよ。夕飯にも出すけど、できたて味見してくれる？」

　そう言って、ママがお皿に盛り付けてくれたのはエビやイカやホタテがたっぷり入った海鮮焼きそば。上にはバターがのっている。

「味見？　食べる食べる！」

　出されたお皿に飛びつく空に、ママが箸を渡す。

「塩バター、ガーリック風味よ」

「わー、すげーいい匂い！　いただきまーす」

「どうぞ、どうぞ。真凛も食べるなら、これ」

　ママが勢いよく焼きそばに箸を伸ばす空を見て笑いながら、わたしにも箸を渡してくる。

「ありがとう」

　ママの試作のバターとガーリックを入れた海鮮焼きそばは、洋風のパスタみたいな味がしておいしかった。