空と海と、願いごと

「どうかしたの?」

「ううん、別に」 
 モヤモヤした気持ちをごまかすように笑うと、空も笑う。

「おれも、おとなになったら東京行きたいんだ」

「そうなの?」

「うん。絶対に東京じゃなきゃだめってわけじゃないけど、とりあえず今住んでる町からは出たい」

 そう言う空の声には、強い決意がこもっているみたいだった。

「もうおとなになったときのこと考えてるんだね」

「真凛は考えない?」

「わたしは……、あんまり考えたことなかったかも。『たいようの家』に引越しが決まったときも、子どもはけっきょくおとなに振り回されてばっかりだってふてくされてただけだし。でも空が言うように、おとなになったら自分で好きなところに行けるんだよね」

 口ではそう言ったけど、わたしはまだあんまりおとなになってる自分が想像できなかった。

 東京から海の田舎町に連れてこられて、「子どもはおとなに振り回されてばっかり」って拗ねてただけのわたしは、外見も中身もまだまだ子どもなのかもしれない。