空と海と、願いごと

「そうだね。いつか……」

　前の家に戻れたらいいな。そう答えようとして、ふと思う。

　わたしは、前の家での生活が好きだった。

　広くはいけど綺麗なひとり部屋があって。近くには服やコスメや雑貨を買いに行けるお気に入りのお店があって。休みの日には、ママとランチをしたりスイーツを食べに行けるおしゃれカフェがあって。学校には気の合う友達がたくさんいて、好きな人だって……。

　そこまで考えて、わたしはあれ？　と首をかしげた。

　前の学校には、仲が良いと思ってた友達や好きな人がいたけど、その子達はわたしが『たいようの家』に引っ越した途端に連絡もくれなくなった。しかもミサやシオリは、わたし抜きで、わたしが好きだった人と遊んでた。

　もしわたしがいつか前の家に戻ったとして、居場所ってあるのかな。前の学校の友達は、「おかえり」って喜んでくれるのかな。

　あらためて考えてみたら、よくわからなくなった。

　黙ってしまったわたしを、空が不思議そうに見てくる。