空と海と、願いごと

「よかった。真凛、ほんとうは『こんな田舎に連れてこられて最悪』って思ってたでしょ」

 空に言われて、ドキリとした。

「わたし、顔に出てた?」

 クレープを持っていないほうの手で半分顔を隠すと、空がクスッと笑う。

「出てた、出てた。不満しかないって感じの、すごいふてくされた顔してたよ」

「そうなんだ……。恥ずかしい……」

 パパやママだけならともかく、空にまで心の中を見抜かれていたなんて……。恥ずかしくて、顔が熱くなってくる。

「でも、わかるよ。もしおれが真凛でも、不貞腐れてだと思う。特にうちの周りは何もないしね」

 空が、バニラアイスの溶け始めたクレープにかじって苦笑いする。

 それからしばらく、黙ってクレープを食べることに集中していた空だったけど……。ふいに顔をあげて、わたしのことをじっと見てきた。

「真凛は、いつか東京に戻りたいって思ってるでしょ」

 そんなふうに聞いてくる空は、わたしが「戻りたいよ」ってうなずくことを疑っていないみたいだ。