空と海と、願いごと

 学校帰りに誰かと寄り道するのなんてひさしぶりだし、おいしいスイーツを食べるのもひさしぶり。
 
 歩いて行ける場所にコンビニすらない『たいようの家』に引っ越してきた日は、東京の家の周りとの違いに絶望したけど……。バスに乗ればおいしいクレープが食べに来られるなら問題ないし、寄り道に誘ってくれた空には感謝だ。

「空たちが遊んだり買い物したりするときは、いつもこの駅前に来るの?」

 クレープのイチゴをかじりながら尋ねると、スプーンでアイスをすくっていた空が顔をあげる。

「うん。ちょっと買い物したいときとか、カラオケ行くときはだいたいここに来るよ。5分くらい歩けば、大型スーパーもあって、その建物の中に本屋とかユニクロとか靴屋とか入ってんの」

「そうなんだ」

「父さんとか陸兄は、服とか靴とかあんまりこだわらないからさ。そこで服も靴も適当に買っちゃうんだけど、おれはこっから電車で1時間くらいのところにあるデカめのショッピングモールまで服買いに行ってる」

「1時間電車に乗れば、ショッピングモールも行けるの?」

「そうだよ。そこまで行けば、映画館もある」

「へえ、いいね。空の服装っておしゃれだなあって思ってたけど……。遠くまで買い物に行ってたからなんだね」

「だってこの辺だと、何もないもん。今度、真凛も一緒に買い物行こうよ」

「うん、行く行く!」

 目を輝かせるわたしを見て、空が笑う。