空と海と、願いごと

「嫌ってる? なんで、おれが真凛のこと嫌うの?」

「だって、初めに食堂で挨拶したとき、感じ悪くわたしから目をそらしたよね」

「あー、あれは……。真凛のこと嫌ってるとか、そう言うんじゃないから」

 海くんが苦笑いしながら、曖昧に言葉を濁す。

「そう言うのじゃないって、どういうこと? それに、あたりまえみたいに呼び捨てにされてるのもわかんない」

「それはだって……。真凛は昔から真凛だったしな」

 むっと顔をしかめるわたしのことを、海くんがちょっと困ったふうに見てくる。それから、

「そっちもべつに、おれのこと、くん付けで呼ばなくていいよ。真凛にその呼ばれ方するの、なんか変な感じ」

 なんて言うから、今度はわたしのほうが困ってしまった。

 変な感じ、って言われたってなあ。

 空やパパやママから、3年前に『たいようの家』に来ていたことや、わたしが溺れかけたこと。空が助けてくれたこと。そういう話は聞いたけど、いまだにやっぱりピンとこないし。昔のわたしが海くんのことを「海」って呼んでたのだって、全く想像がつかない。

 眉をしかめながら歩いていると、理科室の前につく。海くんがドアを開けると、クラスメートたちはもう全員席に着いていた。