空と海と、願いごと

「理科室の場所、どこかわかんの?」

 真顔の海くんに聞かれて、何も言えない。

 わからないよ。わかるわけない。だってわたし、今日転入してきたばかりだもん。海くんの前でクールを装った分、余計に恥ずかしい。

 きゅっと唇をかむと、海くんがつかんだいたわたしの腕をちょっと引っ張った。

「こっち」

 恥ずかしいし、情けないけど、わたしを誘導するように歩き始めた海くんについていくしかない。

 ゆるく引っ張られるようにしながら海くんの少し後ろを歩いていると、上の階に行く階段のところで彼が「朝のあれ、さ」と、低い声でボソリと言った。

「あれ?」

「朝の真凛の態度。あれは女子の反感買ってもしょうがない」

 わたしを振り返った海くんが、眉尻をさげて苦笑いする。

 朝のわたしの態度……、って。石倉さん達との会話でやらかしちゃったことか。そんなの、わざわざ海くんに言われなくてもわかってる。

「だって……」

 ふてくされた顔で言うと、海くんがもっと苦笑いになる。それから。

「空、すごいモテるよ。ちなみに、陸兄も」

 と、あらためて聞かされなくてもわかることを言ってきた。