空と海と、願いごと

「理科の先生がちゃんと黒板に書いてたはずなんだけど……。消されてるな」

 海くんが言うのを聞いて黒板を見ると、たしかに、真ん中あたりにチョークの文字を雑に消したあとが残っている。わたしがトイレに行っているあいだに消されたのかもしれない。

 わざと……? それとも、偶然?

 疑いたくないけど、ふと、自己紹介のときにわたしを睨んでいた石倉さんの顔が思い浮かんでしまう。

 転入初日にやらかすどころか、わたし、意地悪されてる——?

 海くんはたぶん、朝のわたしと石倉さんのやりとりを見ていて、心配して様子を見に来てくれたんだ。そう思ったら、すごく情けなかったし、恥ずかしかった。 

「理科室なんだね。ありがとう」

 わたしは別に、意地悪なんて気にしてない。

 海くんにお礼を言うと、筆箱と教科書、ノートを持って教室を出る。廊下を右に出て進もうとしたら……。

「待て。そっちじゃない」

 海くんに手首をつかまれた。