「今日はまだ学校休みだよね?」

「そうだよ。でも、明日から新学期が始まるから、なんか準備があるみたい。陸兄、生徒会長なんだよ」

 空に聞いたら、そんなふうに言うからびっくりした。

 でも、生徒会長って陸くんのイメージにぴったりだ。見るからに、しっかりしてそうだもん。

「陸くんは生徒会の仕事で、海くんは今日は部活……?」

 そういえば、朝起きてからまだ海くんの姿を見ていない。

「そう。あいつ、水泳やってんの」

「水泳部って、4月からもうプールに入るの?」

 まだ、水が冷たそう……。昨日の海水の冷たさを思い出してわたしが身震いすると、空が笑った。

「いや、さすがに5月くらいからじゃない? 今の時期は、ランニングとか筋トレがメインっぽいよ」

「へえ……。空と——、暉くんは何か部活してるの?」

 空に聞くついでに、いちおう暉くんにも質問する。そうしたら、暉くんに、また少しビミョーそうな顔をされてしまった。

「おれと暉は部活はやってないよ。部活してたら、全然遊ぶ時間なくなるし」

 ビミョーそうな表情の暉くんの代わりに、空が答えてくれる。

「陸兄や海は、生徒会とか部活とか、家の手伝いとか。毎日バカみたいに一生懸命やってるけど、おれはそういうのはあんまり……」

 空がそう言って、ふっと苦笑いする。
 
 気のせいだろうか。わたしはそのとき、出会ってからずっとニコニコしていた空の表情に陰が落ちたような気がした。