「真凛、そこ座れば」

 声をかけられて空の向かいの席にお皿を置くと、空の隣で朝ごはんを食べていた暉くんが、ビミョーな目で見てきた。

 やっぱり、暉くんはわたしのことがあまり好きじゃないっぽい。

「いただきます」

 わたしは暉くんのビミョーそうな顔に気付かないフリをして、朝ごはんを食べることにした。

 ママが焼いてくれた半熟の卵焼きをトーストにのっけて齧っていると、食堂の入り口から陸くんが顔をのぞかせた。

「空~」

 入口で手を振る陸くんは、中学の制服を着ている。

「おれ、今から学校行ってくるから。掃除とか洗濯とか、父さんの手伝いよろしくな」

 陸くんの言葉に、空があからさまに嫌そうな顔をする。

「はあ~? なんでおれ? 海は?」

「あいつは今日部活だって。もうだいぶ前に家出てった」

「いつ帰ってくんの?」

「昼前じゃない? 掃除はともかく、洗濯だけでも干しといて。今、洗濯機回してるから」

「え~」

「え~、じゃない! 今日は外壁工事の業者の人が来て、なんかいろいろ相談するんだって。それに真凛のとこの引っ越しの荷物も届いてバタバタするから。空が家のことちゃんとやれ。わかったな」

 陸くんはそう言うと、パタパタと『たいようの家』を出て行く。