空と海と、願いごと

『5年生のときに、海で溺れたときのことを知りたい』

 わたしがそう言ったら、パパとママはちょっと困った顔をしていた。

 海岸で波が足にかかってパニックを起こしたわたしに、トラウマの原因を話していいのか心配だったんだと思う。

『途中でダメそうだなって思ったら、ちゃんと言うから』

 パパもママもあんまり話したくなさそうだったけど、わたしにしつこくせがまれて、最後は仕方なさそうに話してくれた。

 3年前。小5の夏休み。ママに病気が見つかって、入院して手術をすることになった。(そのことは、なんとなく覚えてる)

 早期に発見されたから、命に関わるようなものではなかったんだけど、生まれ初めてのママのいない生活に、わたしはとても落ち込んでいたらしい。

 ママの実家のおばあちゃんが代わりにいっしょにいてくれたけど、わたしは部屋に閉じこもってばかり。

 わたしのことを心配したパパは、「いっそのこと、全然違う環境のところで気分転換させよう」と、友達の太一さんが経営する『たいようの家』に二週間ほどわたしを預けることにしたらしい。

 わたしが太一さんや空たち芹沢家の人たちに初めて会ったのは、そのとき。(そのとき、まだ暉くんはたいようの家に同居してなかったみたい)全然信じられないけど、当時のわたしは『たいようの家』のみんなと親しくなって、生活にも馴染んでいたそうだ。