「真凛ちゃんだよね。ひさしぶり。大きくなったね」

 男の人が、わたしを見て懐かしそうに目を細める。

 どうやら、男の人のほうはわたしを知っているらしい。わたしは、全然覚えがないけれど。

 不審げに見ていたら、パパがわたしの肩に手をのせた。

「真凛、この人がパパの友達の芹沢(せりざわ)太一(たいち)。この、たいようの家のオーナーだよ。真凛は覚えてないと思うけど、小さいときに会ったことがあるんだ」

「ふーん」

「真凛ちゃん、来てくれてありがとう。これから、よろしくね」

 太一さんが、にこりと爽やかに笑いかけてくる。

 わたしは「よろしく」なんて、ぜんっぜんしたくないけど……。

 パパとママの手前、いやいや、「どうも」と軽く頭を下げた。

「真凛、もっとちゃんとあいさつしなさい。ごめんなさい。最近反抗期で……」

 ママが太一さんに申し訳なさそうな顔を向けながら、わたしに注意してくる。ふいっと顔をそむけると、ママは「もう……!」と、眉根を寄せた。