「水持ってきたけど飲む?」

 空が持ってきた水のペットボトルの蓋を開けて差し出してくる。それを受け取ろうとして、わたしは自分が右手に何かを握りしめていることに気がついた。

 そっと開くと、手作りの青色の小さな巾着袋が出てきた。袋の口には長めの茶色の紐が結ばれていて、首から下げられるようになっている。見た感じ、お守りみたいだ。

 そういえば、海岸でパニックになっているとき、助けにきてくれた誰かの胸元にあるものをつかんだ。それが、このお守りだったのかも。

 あのとき、あのひとが気付いてくれなかったら、わたしは夕方の海でひとりでパニックになって倒れてた。

 海岸には人気がなかったし、あのひとが来てくれなかったら夜まで誰にも気付いてもらえなかったかも……。考えただけでもゾッとする。

 でも――、あれはいったい誰だったんだろう。