パパとママにしかめっ面で反抗しているうちに、車は細い道へと入っていく。それからしばらくして、パパが車を止めた。

「真凛、着いたよ」

 パパとママが、わたしに声をかけて車を降りる。車が止まっていたのは、壁の色がはがれたぼろい民宿の前だった。

『たいようの家』

 民宿の看板には、そんな文字が書かれている。

 だけど、太陽なんて明るい言葉のイメージとはうらはらに。民宿の周りは、さびれてしーんとしていた。

「ここが、今日からお世話になる民宿よ」

 にっこりと笑いかけてくるママに、わたしは顔をひきつらせた。

 こんなところ、冗談じゃない……!

 思わずそんな言葉が喉まで出かかったとき、『たいようの家』から人が出てきた。

航一(こういち)、ゆり子さん、いらっしゃい」

 パパとママの名前を呼びながら歩み寄ってきたその男の人は、背が高くて、小麦色に日焼けしている。

 パパと同じ年のはずだけど、若く見えるし、目元も涼やかでかっこいい。こんな人がパパだったら、参観日や運動会でちょっとクラスメートたちの目を引くだろうなって雰囲気だ。

 別にイケメン好きってわけでもないけど、ちょっと観察していたら、その男の人がこっちを振り向いた。