階段から砂浜に足をおろすと、やわらかな砂の中にスニーカーがサクッと少し埋まった。

 砂の上って、思ってたより歩きにくいんだな。公園の砂場よりも、砂がさらさらしてる。

 ゆっくりと歩いて、海のほうに進む。だけど、靴も足も濡らしたくないから、波が押し寄せてこないギリギリのところで止まった。

 夕方の海岸には誰もいない。まだ海水浴の時期には早すぎるっていうのもあるだろうけど……。オンボロな民宿の裏にあるこの海岸が、そもそもあんまり人に知られていないんだと思う。

 海に向かって右側はゴツゴツした岩場の海岸で、行き止まりみたいになっているから、良いように言えば、ここは『たいようの家』のプライベートビーチ。

 だけど、泊まるところがあれじゃな〜。

『たいようの家』は、外見が思ってた以上にオンボロだった。

 パパは夏休みまでに『たいようの家』をリニューアルさせるってやる気満々だったけど……。ほんとうに立て直せるのかな……。

 ザザン、ザザン。

 やけにうるさく響く波の音を聞きながら、ため息を吐く。