わたしに先に話しかけてきたのは空のほうなのに、そんなこと言われてもな……。

 微妙な目で暉くんのことを見る。そんなわたしの態度が気に障ったのか、暉くんは不満そうに口をへの字に下げた。

「あ、それから……。空くんは暉って呼ぶように言ってたけど、おれはあんたに呼び捨てにされるのは嫌だから。気安く呼ばないでね」

 暉くんが不機嫌な声でそう言って、わたしをにらむ。

 ふいっと顔をそらして空を追いかけていく暉くんの背中を見つめながら、わたしはしばらく呆然とした。

 いや。べつに、暉くんが嫌なら呼び捨てになんかしないけどさ。わたし、暉くんににらまれるようなことした?

 調理場のほうに行った暉くんは、空の前では、びっくりするくらい、にこにこと笑顔をふりまいてる。

 二重人格なの? ってつっこみたくなるくらい、わたしの前にいるときと態度が違う。空にすごくなついているみたいだったし、彼にかまわれてるわたしのことが邪魔だったのかもしれない……。

 双子の空と海くんは仲が悪くて、暉くんはなぜかわたしのことを敵対視してる。

『たいようの家』の男の子たちは、全員顔はいいけど、人間関係は少し複雑そう。

 わたしは、ほんとうにここでうまくやっていけるだろうか……。引越し先の新生活には、不安しかなかった。