空と海と、願いごと

 砂の上を歩くわたしの後ろから、ちょっと遅れてついてくる海くんの足音。それを聞きながら、わたしはゆっくりと波打ち際へと歩いた。そうして、波がかからないギリギリのところで足を止める。

 振り向くと、海くんがわたしから数歩離れた場所で立ち止まった。

 困った顔で立っている海くんに笑いかけると、彼が眉をさげて、ますます困った顔になる。その顔を見て、わたしはまた笑ってしまった。

「なにがおかしいんだよ」

 海くんが、ちょっと不貞腐れた声で言う。

「おかしいんじゃなくて、ちょっと嬉しいのかも。海くんがひさしぶりに、わたしを無視しないでくれたから」

「べつに、無視しようとしてたわけじゃない……」

 気まずそうにわたしから目をそらした海くん。その言葉に、ちょっとほっとする。

 そっか。無視されてたわけじゃないんだ。もしかしたら海くんも、どうしたらいいかわからなかったのかもしれない。空の気持ちと、海くんへの気持ちのあいだで戸惑っていたわたしみたいに。

 だから今日は、海くんに伝えたいと思ってここに誘ったんだ。