空と海と、願いごと

「わかった。だったら、ひとりで行く!」

 海くんに宣言すると、車の止まっていない駐車場を浜辺に降りる階段に向かって走る。

「あ、ちょっ……、真凛! それはダメ!」

 階段の手前まで走って行ったところで、慌てて追いかけてきた海くんに止められた。

「ひとりで行って、なにかあったらどうすんだよ。すぐ、空のこと呼ぶから」

 海くんがズボンのポケットに入れていたスマホを取りだす。海くんがなにかメッセージを打とうとし始めたから、わたしはそれを彼から無理やり取り上げた。

「なにか、ってなに? 海くんは、なにを心配してるの?」

 海くんの目をじっと見つめて尋ねると、彼が困ったようにわたしから視線をはずす。

「心配するようなことはなにも起きないよ。海くんが、わたしと一緒に来てくれたら」

 そう言うと、わたしは海くんにスマホを返した。そのまま階段を下りていくと、やがて諦めたのか、海くんがわたしのあとからついてくる。