空と海と、願いごと

「でも、真凛は3年前も今も、海のことが好きなんだよね?」

 切なげな目をした空に見つめられて、胸がチクンと痛む。

 空は、やさしくてかっこいい。オシャレな空とは話も合うし、付き合ったら、きっと楽しいと思う。だけど……。そんな想像をしたときに、つねに頭を片隅にあるのは海くんのことだ。

 小学生のとき、ママの病気が治るように願ってくれたこと。溺れそうになったわたしを助けてくれた腕の温かさと潮風みたいな香り。新しい学校に転入してきた初日のわたしを、クラスメートの意地悪からさりげなく助けてくれたこと。岩場で見た綺麗な夕陽。前の学校の友達や好きだった人の話を真剣に聞いてくれたこと。

 そんなふうに、悲しかったり、淋しかったりしたときにわたしの気持ちに寄り添ってくれた海くんに、どうしても心が惹かれてしまう。3年前の夏も。今も。

 空は、わたしを好きになってくれたのに。ここに引っ越してきた日からずっと、「好きだ」と伝えてくれていたのに。

 わたしは、空の気持ちにこたえられない。