空と海と、願いごと

「あのときも、3年前も、真凛を助けたのは海だよ。あのとき真凛が持ってたのは、海のお守り。だけど、おれのものだってウソついて、海にも真凛にほんとうのことは言うなって約束させた。真凛はまだ何も思い出していないみたいだったから、なにか思い出す前に、おれのウソで記憶を塗り替えちゃえばいいって思った。ほんとうのことを教えて、真凛がまた海のことを好きになるのは嫌だった。ごめんね、ウソついて」

 空が、悲しそうな目をして笑う。それから、わたしに向かって手を差し出してきた。

「これ、真凛にあげる」 

 そう言って空がわたしの手にのせたのは、淡いピンク色のさくら貝。

「これ……」

 手のひらで光る小さな貝殻を見つけて瞬きをすると、空が「今朝、見つけたんだ」とつぶやいた。

「おれね、真凛が来てからずっと、今度こそおれのことを好きになってほしいって思ってた。今朝さくら貝を見つけたときも、『真凛がおれのこと好きになるように』って人魚に願おうかと思ってたんだよ」

 人魚の話は作り話だ、って言ってたくせに。空がそんなことを言う。

 それはきっと、現実的じゃないってわかってる作り話にもすがりたくなるくらい、わたしを想ってくれてるってことだから。