空と海と、願いごと

「あ、空……」

 見上げてつぶやくわたしを見て、空がふっと笑う。

「海じゃなくて、がっかりした?」

「え……?」

 思わず視線を左右に揺らすと、頭上から空のため息が聞こえてくる。

「やっぱり、がっかりしてるんだ」

「そんなことは……」

「いいよ、べつに。がっかりしてる真凛にひとついいこと教えてあげる。『真凛がひとりで浜辺に降りて行ったみたいだから見てこい』って。部屋にいたおれに、わざわざ連絡してきたのは海だよ」

「え……?」

 こっそりと浜辺に降りてきたつもりだったのに、海くんに見られてたらしい。

「海は、真凛が浜辺にひとりで行くことを人一倍気にしてるよ。3年前の事故のあと真凛が記憶をなくしたことにも、水がかかるとパニックになることにも、自分のせいだって責任感じてるんだと思う」

「3年前のことは海くんのせいじゃないよ。流されたサンダルを追いかけたわたしの不注意でもあるし……」

「そうかもしれないけど。あの日、真凛が夕方の浜辺にいたのは、さくら貝を探してたからでしょ」

 空に言われて、ドキッとする。

 挙動不審に視線を泳がせていると、空が「やっぱり」と苦笑いした。