空と海と、願いごと

 今日は部活に行ってたはずだけど……。わたしが寄り道してる間に、家に帰ってきていたらしい。 

 なんだか、気まずいな。

 このまま近付いて行っても、海くんにそっけない態度をとられることはわかっている。だったら、海くんの掃除が終わるころに家に入ろうかな。

 わたしは『たいようの家』に背を向けると、海くんに気付かれないようにちょっと回り道をして、民宿の裏の浜辺に降りた。

 夕方の浜辺には、今日も誰もいなかった。

 ザザン、ザザン、と。波の音だけが、やたらとうるさい。

 海くんの掃除が終わるまでの時間つぶし。そのつもりで浜辺に降りてきたわたしは、なるべく波打ち際に近寄らないようにしようと決めて、『たいようの家』の駐車場につながる階段に座った。

 すでに太陽は水平線の向こうに沈んでいて、赤と紫のグラデーションに染まる空がきれいだ。その景色をぼんやり見ていると、後ろから誰かが階段を下りてくるような気配がする。

 もしかして、海くんにバレた……?

 ドキッとして振り返る。だけど、わたしの後ろにいたのは海くんじゃなくて、空だった。