空と海と、願いごと

 ほんとうは、寄り道したい場所なんてない。だって、寄り道するような場所にはバスに乗らないと行けないのだ。

 暉くんだって、わたしが強がってウソをついてることに気付いていると思う。だけど暉くんは、わたしの「寄り道して帰りたい」て言葉が、「ひとりになりたい」って意味だってことにも気付いてくれている。だから……。

「早く仲直りしなよね」

 暉くんはちょっと不満そうな顔でそう言って、空を追いかけていった。

 空と暉くんが帰っていったあと、わたしはひとりでバスに乗って、前に空と一緒にでかけた駅前に行ってみた。

 特に買いたいものはなかったけど、本屋でマンガや文房具を見たり、ちょっと服を見たりして一時間くらい時間を潰したあと、バスに乗って『たいようの家』に戻る。

 帰ったら、そろそろ夜ごはんの時間だ。食堂で空や海くんと顔を合わすことになるけど、また無視されちゃうのかな……。そう思ったら、帰るのも気が重い。

 とぼとぼと『たいようの家』まで歩いて帰ると、玄関の前を掃除している海くんが見えた。