空と海と、願いごと

「暉はもっと、おれ以外のやつとも絡んだほうがいいよ」

 空にそう言われた暉くんは、なんだか複雑そうな顔をしていた。

「暉さ、この町に来てからもう一年以上経つのに、学校のやつとはあんまり絡まずに、おれにばっかりくっついてくんの。ちょっと人見知りで性格はわがままだけど、真凛も仲良くしてあげて」

 空に言われて、暉くんのほうを見る。

「ああ、うん……。よろしく、暉くん」

「よろしく……」

「呼び方も、暉でいいよ。な、暉」

 空に言われて愛想笑いする暉くんだったけど、わたしと仲良くしたいとはあんまり思っていなさそう。

 空と暉くんとわたし。3人の空間に気まずさを感じていたら、海くんが麦茶のグラスをふたつ持って近付いてきた。

「麦茶、たりてる?」

「あ、ひとつほしいです……」

 小さく手をあげると、海くんが無表情で、わたしの前に麦茶を置いた。そのまま海くんもわたし達の近くに座るのかなと思っていたら、それ以上誰とも話さずに、ふらっと離れていく。そうして、わたし達から一番遠い席にひとりで座った。

 最初はわたしが避けられなのかな、と思ったけど……。わたしにも暉くんにも笑顔でしゃべりかける人あたりの良い空が、海くんには見向きもしない。