その夜。お風呂からあがったわたしは、部屋に戻る前に食堂に行った。

 調理場での仕事を終えたママはもう部屋に戻っていて、食堂は真っ暗。

 のどが渇いたからお水が飲みたくて、薄暗い食堂をゆっくりと歩いて冷蔵庫を目指す。そこにたくさん入っていたペットボトルの水を一本もらうと、わたしは調理台に少しもたれかかった。

 ペットボトルのフタを開けると、ごくごくと四分の一くらい一気に飲む。それから、わたしは暗い食堂でしばらくぼーっと考えこんでしまった。

 ごはんを食べたあとも、お風呂に入っているときも、ずーっと考えてしまうのは海くんのこと。
 3年前の夏の記憶を思い出して、わたしは海くんのことが好きだって気付いたのに……。海くんは、わたしの気持ちを聞くことを拒否してる。

 気持ちを伝えて断られたら仕方がないって思えるけど、気持ちを伝えることすらできないままに拒絶されるのは悲しい。

 ペットボトルを両手で握りしめて、ため息を吐く。

 そうしながら、きっと空も、優柔不断な態度をとったわたしのせいで傷付いたんだろうなって思った。