空と海と、願いごと

「ありがとう、ってなにが?」

「海で女の子を助けてくれたこと。わたしも助けなきゃって思ったのに、ちょっとパニックになって声も足も出なかったから……」

 わたしの話に、海くんが少し目を細めてうなずく。

「あー、うん。あのときは、ちゃんと真凛のこと見ててよかった」

「え?」

「ううん、あの子が無事でよかったよね」

「うん。海くんがすぐに駆けつけてくれてよかった。けっきょく、わたしはまた倒れちゃって、何の役にも立たなかったけど……」

「そんなことないよ。あの子を助けたあと真凛が倒れてたから心配したけど、今回はすぐに目が覚めたみたいでよかった」

 海くんが、優しい目をしてふっと笑う。その笑顔に、わたしのドキドキが加速した。

 海くん、わたしのことを心配してくれてたんだ……。それに、『今回は』って言うってことはやっぱり……。

「わたしを助けてくれたのは、海くんなんだよね……?」

 尋ねた瞬間、優しく微笑んでいた海くんの顔がこわばった。