空と海と、願いごと

「う、うん。平気……!」 

「そっか。うつむいて立ち止まってるから、まだ気分が悪いのかと思った」

「ううん。ちょっと考えごとしてただけ」

「ふーん、それならいいけど」

 そう言うと、海くんの隣を追い越して階段を上っていく。

 海くんがわたしのそばを通り過ぎていくとき、なんでもないことのはずなのに、ものすごく緊張した。

 先に階段を上っていく海くんの背中。それを見つめるだけで、心臓がドクドクと高鳴る。

 一度自分の気持ちに気づいてしまえば、それを無視するのは難しい。

 空を傷つけてしまうのはわかっているけど。わたしがドキドキさせられてしまうのは、どうしたって海くんだった。

「う、海くん! 今日はありがとう!」

 遠ざかっていく背中に思いきって声をかけたら、海くんがちょっとびっくりしたように振り向いた。