空と海と、願いごと

「さあ。しばらく女の子に付き添ってたけど、今はもう部屋に戻ってるんじゃない？」

　空の言い方は、なんだかそっけない。それが少し気になったけど、わたしは３年前のことを海くんに確かめることで頭がいっぱいで……。

　空が何を考えてて、どんな気持ちでいるかまでは頭が回らなかった。

「わたし、ちょっと海くんのところに行ってくる」

　立ちあがろうとすると、空が横からわたしを抱きしめてきた。

「行かないでよ」

　腕にぎゅーっと力を入れてしがみついてくる空に、ドクンと心臓が鳴る。

　抱きしめられてびっくりしたせいもあるけど。空の気持ちも考えずに海くんのところへ行こうとしたことへの罪悪感もある。

　空は、初めてここに来た日からわたしを好きだと言ってくれてる。空からの告白に、わたしはずっとどう返事をすればいいか迷っていた。

　空は、３年前にわたしを助けてくれた男の子かもしれなかったし。いっしょにいれば、もしかしたら、空のことを好きになるときが来るかもしれないと思った。だけど……、今のわたしには、わかっている。

　空に告白の返事ができずにいたのは、いつの頃からか、海くんの存在がわたしの心のなかに引っかかっていたからだ。

　転入初日に助けてもらったときから、わたしはたぶん海くんのことが……。