空と海と、願いごと

 さくら貝が見つかったのは、ママの病気が良くなって東京に戻る前の日。

 夕方の海で、キラキラ光るピンク色の貝を見つけたわたしは嬉しくなった。

 これがあれば、願い事が叶うかもしれない。

 嬉しくなって『たいようの家』に戻ろうとしたら、砂浜の少し盛り上がったところに足をひっかけて、転んだ。

 片方だけサンダルが脱げてしまって。「あっ」と思ったときには、押し寄せてきた波がわたしのサンダルをさらっていった。

 流されちゃう――!

 ママに買ってもらったばかりの、お気に入りのサンダルだった。

『このサンダルで、夏休みはたくさんお出かけしようね』って。そんな約束をしたあと、ママが入院することになって、けっきょく家族でのお出かけはできなくなった。
 
 でも、ママが退院するときは、このサンダルを履いて迎えに行くつもりだった。

 焦ったわたしは、流されたサンダルを追いかけて海に入った。だけど、手を伸ばしても伸ばしても、サンダルは波にさらわれて流れていくばかりで。気付いたら、思ったよりも深いところまでサンダルを追いかけて海に入ってしまっていた。