空と海と、願いごと

 ハッとして振り向いたわたしに少し微笑みかけてきたのは、キャラメル色の髪の男の子。

「海くん……?」

 名前を呼ぶのと同時に、彼が波にさらわれたかけている女の子のもとに飛び込んで行く。

「危ない……」

 海くんの後ろ姿を見つめながらつぶやいたとき、頭にズキンと痛みがはしった。

 目の前がチカチカして、遠い昔の記憶の断片が、スライドショーみたいになって少しずつ蘇える。

 3年前の夏のこと。ママの入院で『たいようの家』に預けられていたわたしは、よくひとりで浜辺に出て、さくら貝を探していた。

 さくら貝を探していたのは、『たいようの家』で仲良くなった男の子から、『夕陽が沈む直前に、さくら色の貝を海に落として願い事をすれば、人魚が叶えてくれる』と聞いたから。