空と海と、願いごと

　ちゃんと下がっておいてよかった。そう思ったとき。

「あ〜、ナナのサンダル〜」

　女の子の叫ぶ声がした。

　ふと見ると、ピンク色の子ども用サンダルが片方、波にさらわれて流されている。

「待って〜」

　幼稚園くらいの女の子が、一緒に遊んでいたふたりの男の子のそばを離れて海に入る。だけど、女の子が手を伸ばそうとすると、次の波がやってきて、サンダルが海の深いほうに流されてしまった。

「あ〜」

　女の子がまたサンダルを追いかけるけど、女の子が手を伸ばそうとする度、サンダルは波で流されていってしまう。

　待って。このままじゃ、危ないんじゃ――。
　
　女の子のお父さんかお母さんらしき人がいないか探したけど姿は見えず……。砂浜で一緒に遊んでいた男の子たちは、作ったお山のトンネルを掘るのに夢中で、女の子が海に入っていったことに気付いていない。