空と海と、願いごと

「たいしたことは話してないよ。焼きそば作り頑張れって言われただけ」 

「……、ふーん」

 ウソはついてないのに、空が納得いかないって顔で見てくるから困る。

「ほんとだよ」

 わたしがジッと目を見て言うと、空は不機嫌そうな顔を少しだけうつむけた。

「わかってるよ。だけど、海とはあんまり関わらないで」

「なんで?」

「……、なんでも」

 やっぱり、空は海くんのことを嫌う理由を教えてくれない。

「真凛〜、空く〜ん。こっち、手伝って〜!」

 空とのあいだにちょっと気まずい空気が流れ始めたとき、ママに呼ばれた。

「はーい。なに、真凛ママ」

 ママを振り返った空は、いつものにこにこ笑顔に変わる。

 ママのところに笑顔で走っていく空と、海くんのことで不機嫌になる空。そのどっちが、ほんとうの空なのかわからない。

 笑顔でママのお手伝いをする空の横顔を見つめながら、わたしは少しモヤモヤとした。