空と海と、願いごと

「おい、お前たちもサボってないで手伝え」

「ええー」

「ええ、じゃない。ぼーっとしてたら、すぐ10時になるぞ」

「なんで陸兄までそんなに張り切ってんの。心配しなくても、そんなにお客さん入んないよ」

「そんなことないよ。真凛のパパやうちの父さんが宣伝頑張ってたし。おれも、学校でもチラシ配ったし」

 そう言う陸くんは、生徒会長の権限を使って、『たいようの家』のプレオープンイベントのチラシを全校生に配っていた。

「学校でチラシ配ったくらいでそんな効果ある?」

「ある、ある。チラシ配ったあと、おれ、生徒会の後輩に聞かれたよ。『イベントには空くんもいますか?』って。『空は屋台で焼きそば売るよ』って言ったら、絶対買いにくるって言ってた。だから、接客頑張れよ」

「え、なにそれ……」

 陸くんに肩を叩かれた空が、迷惑そうに顔をしかめる。

 どうやら陸くんは、イベントの集客のためにモテる弟を利用したらしい。

 そういえば、学校でイベントのチラシが配られたとき、うちのクラスでも女の子たちが少し騒いでた。

 空や陸くん目的でイベントに来る子もいるとしたら……。今日のイベントはけっこう忙しくなるのかも。