空と海と、願いごと

「はあ?」

 石倉さん達からキレ気味に言われて、わたしは「暉くんっ……!」と小声で注意した。

 たしかに、石倉さん達の言い方は嫌味っぽかった。だけど、《ブス》なんて、たとえ心の中で思ったとしても、実際に女の子にぶつけちゃダメな言葉だ。

 暉くんには、気に入らないことがあると本音を平気で口にしちゃうところがある。だから、敵が増えるんだよ……。

 わたしに代わって石倉さん達とバチバチ睨み合っている暉くんを見つめて苦笑いする。

 しばらくバチバチな睨み合い合戦を続けていた石倉さん達と暉くんだけど……。最終的に勝利したのは暉くん。

「行こう」

 暉くんに睨み任された石倉さん達は、悔しげに唇を噛んで帰って行った。

「真凛、また絡まれたらいつでもおれのこと呼んでね」

 腰に手をあてて、石倉さん達の背中を見送る暉くんは、なんだか誇らしそうだった。

 暉くんが石倉さん達にケンカ腰の態度をとったのは、たぶんわたしのためだろう。

 暉くんには、転校初日にクラスメートの女子と揉めた話をしてる。石倉さん達の態度を見て、揉めたのがあの子達だってわかったから、暉くんはわたしを守ろうとしてくれたんだと思う。

 その気持ちは嬉しいけど。やっぱり《ブス》は、やっぱりダメだ……。

「真凛、あの子達となにかあったの?」

 石倉さん達にやたらと敵対心を向ける暉くんに、空は不思議そうだったけど……。

「ううん、べつに」

 わたしは笑ってごまかした。

 石倉さん達は空のことが好きみたいだし。空とあの子達が揉めたりしても、ややこしいなって思ったから。