授業後のホームルームが終わって席を立つと、教室のドアから暉くんがひょこっと顔を覗かせた。

「まーりーんー! かーえろっ」

 わたしと目が合うと、暉くんがにこにこと可愛い笑顔を振り撒きながら手を振ってくる。

 暉くんとふたりで一緒に学校から帰ったのが、1ヶ月くらい前のこと。

 あのあと暉くんは空と無事に仲直りができて、それはとってもよかったんだけど。仲直りのキッカケを作ってあげて以来、暉くんがやたらとわたしになついてくるようになった。

 最近は、『たいようの家』にいるときも、学校でも、「真凛、真凛」ってわたしに絡んでくる。

 昼休みとか、授業のあいだの5分休憩も、わざわざわたしの教室に来てくれたりして。忠誠心の強いワンコみたい。

 陸くんが言うには、暉くんは「気を許せる」って思った相手には、とことん執着するらしい。

 そりゃあ、わたしも、嫌われるよりは好かれるほうが嬉しいし。なついてくれる暉くんのことは弟みたいでかわいいけど……。

 引っ越して来てすぐの頃は、わたしのことをゴミでも見るみたいな目で見てきたくせに。切り替えの速さがさすが、暉くんだ。

 とはいえ、転入初日に石倉さん達とやらかして以来、なかなかわたしに話しかけてくれるクラスメートはいないし。しょっちゅう絡みに来てくれる暉くんのおかげで、わたしは学校で退屈せずに済んでいる。