「おれ、先に入ってるから」

 空に手を繋がれているわたしのそばを通り過ぎていく海くんは、なんだかそっけない。さっきまで一緒に夕陽を見て、たくさん話をしていたのに。それが全部、夢だったみたい。

 パタン、と。冷たい音がして、海くんの背中が玄関のドアの向こうに消えてしまう。寂しい気持ちでうつむくと、空が繋いだ手をぎゅっと握りしめてきた。

「真凛、明日はおれのこと置いて先に学校行かないで。帰りも、一緒に帰ろうよ。おれ、暉とちゃんと仲直りするよ?」

 顔をあげると、空がわたしをじっと見てきた。

「真凛が今日、おれのこと避けてたのって、暉と仲直りさせたいからだよね」

 空に言われて、ドキッとする。

 細かいことなんて何も気にしていないみたいに、いつも笑っていて、ちょっと楽観的な空。そんな空に、わたしの企みがバレるはずないって思ってたのに……。

 案外、空はするどい。